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怪談・夢語り1「しょうけら-2」
2. しょうけらが踊る
女性の肩にいるしょうけらは、 いつも夢に出てくるしょうけらとは少し違っていた。 そのしょうけらは―― いつもより白くぼやけていて ――――なにより “顔”があったのだ。 いつから憑いていたのか…… ――――なにかポカンとした表情で しょうけらは、女性の背でゆらゆらと踊っていた。 母の話では、 女性はお姉さんの持っていた、 あのマルチーズの人形を 私に届けに来たらしい。 なにか、遺言のようなメモが部屋に残されており、 女性はそれを読み、わざわざ私にぬいぐるみを持ってきたのだ。 ――――しかし……… 私はぬいぐるみを受け取る事を頑なに拒否し、 母にすがりついて大声で泣きじゃくった。 揚げ句に過呼吸発作を起こし、一騒動起きたらしいのだ。 それだけの事があったのに、記憶には全く残っていない。 だから―― 記憶に残っている情景だけ記す。 アパートの暗い廊下は いつも何か澱んでいた。 その澱みは 徐々に白いしょうけらに染み込み―――― しょうけらは 黒く変色していった……… ――――やがて……… |
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