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怪談・夢語り2「お友達になって-5」


      5. 遺影



 母が私に電話をくれたのは

 祖母が亡くなった直後だったそうだ。

 線黒つまり

 ちょうど私が変貌していく老婆の夢にうなされていた頃

 祖母は異界の人へと変わっていったのだ。
行間80
 「明け方倒れてから、ずっと意識が戻らなくてさ、そのまま……
 線赤大どうしたのあんた?! 顔真っ青だよ!」
行間広め
 私は母の問いには答えられなかった。

 私の視線は、祖母の遺影に釘付けになり、

 どうしても逸らす事ができなかったのだ……。

 (あの……おばあちゃんだ……)

 手の震えを強く握りしめてごまかしながら、恐る恐る母に聞いてみる。
行間80
 「……お婆ちゃんさ、死ぬ間際ってどうだったの?」

 「あれだけ好き放題した人だからね、まあ、それなりさね」

 「さびしそうだった?」

 「慕ってくる人はいないからねー。自業自得ってやつよ」
行間80
 「そう……。次は四十九日だよね? ちゃんと供養してあげようね」

 「え〜〜〜、やんないよぉ。そんなの」

 「え?! どうして!」

 「どうせ来る人なんていないんだし、坊さん儲けさすだけだろ……」

 「ちょっと! お母さん止めてよ! ちゃんと法要やってあげて!
  お金なら出すから!」

 「な、なんだよこの子はいきなり! どうしたのよ、さっきから。
  だいたい子供の頃1度会ったきりの縁の薄いおばあちゃんなのに
  妙にむきになってさぁ……」
「だって写真が……」
 遺影の老婆は、

 あのお花畑の優しげなおばあちゃんに間違いなかった。
 けれど蝋燭の炎のゆらめきに瞬いたその表情が……

 線黒一瞬
行間80
あの………
遺影
      2006.夏版「怪談・夢語り」
+++ 終わり +++
      夢裡明々として六趣有り
      覚めて後空々として大千もなし。(笑)
            (永嘉大師證道歌の四より)
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